組織よりも個人を選んだ理由

哲学

― 価値観ではなく構造の問題

組織に対して強い反感があったわけではない。
会社員として働いた期間もある。
だが、そこで感じた違和感は一貫していた。

それは「合わない」という感情ではなく、
「非効率だ」という判断だった。

意思決定に時間がかかり、
責任の所在が曖昧になる構造。
それを前提として受け入れることが、
合理的に思えなかった。

組織は多数を前提に設計されている。
その結果、
安全性や同調が優先されやすい。
それ自体が悪いわけではない。
ただ、自分には合わなかった。

だから二十歳で起業した。
自由になりたかったわけではない。
判断を自分で完結させたかっただけだ。

組織が非効率に見える理由の多くは、
能力や意欲の問題ではなく、
構造上の前提にある。

組織は多数を前提に設計されるため、
スピードや柔軟性よりも、
安全性や再現性が優先されやすい。
これは欠点ではなく、
目的の違いによる設計差だ。

一方、個人での判断は、
意思決定の速さと責任の明確さを
優先できる。
どちらが優れているかではなく、
どちらが合うかの問題になる。

組織が合わないと感じる場合、
努力不足や協調性の欠如と
結びつけられがちだが、
実際には構造的な不一致であることも多い。

感情ではなく構造で捉えることで、
選択は過度に重くならずに済む。

経営者として八年が経つ。
正解だったかは分からない。
ただ、組織に戻りたいとは思わない。

これは組織を否定する話ではない。
向き不向きは感情ではなく、
構造で決まることがあるという事実の整理だ。

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