タトゥーアーティストになるには?
資格・法律・初期費用・キャリアの現実を整理する
タトゥーアーティストは、世界的には職業として確立されている一方、日本では制度や認識が複雑な分野である。
本記事では、タトゥーアーティストになるために必要とされる資格・法的位置付け・初期費用・学習ルートを整理する。
1. タトゥーアーティストに国家資格は必要か
日本の場合
結論から言うと、
タトゥーアーティスト専用の国家資格は存在しない。
ただし、日本では長年にわたり
「皮膚に針を刺す行為=医療行為に該当するか」
という点が争点となってきた。
2010年代以降、裁判を通じて
「医療目的でないタトゥー施術は必ずしも医療行為ではない」
という解釈が示され、現在は以下のような状態にある。
- タトゥーは原則として違法ではない
- ただし、自治体や施設ごとの指導・解釈差は残っている
- 衛生管理・説明責任が強く求められる
2. 海外で求められる資格・ライセンス
海外では、日本より明確な制度がある地域が多い。
例:アメリカ・ヨーロッパ
- 州・自治体ごとにタトゥーライセンスが必要
- 多くの場合、以下が条件になる
- 衛生講習の受講
- 血液感染症に関する知識テスト
- 施術環境の検査
これは「表現規制」ではなく、
公衆衛生を守るための制度として位置づけられている。
3. 日本でタトゥーアーティストになる一般的ルート
日本では制度が整備されていないため、
業界内の慣習に基づくキャリア形成が一般的である。
主な流れ
- デッサン・基礎美術の習得
- タトゥースタジオへの相談・見学
- アプレンティス(見習い)として活動
- 補助作業(衛生管理・準備・片付け)
- 練習台・人工皮膚での施術練習
- スタジオ所属または独立
この過程は数年単位になることが多い。
4. タトゥーアーティストに必要な知識・スキル
技術以外にも、以下の知識が不可欠とされる。
- 皮膚構造・治癒過程の理解
- 衛生管理(消毒・使い捨て器具)
- デザイン力・構図理解
- カウンセリング能力(同意形成)
- 長時間作業に耐える集中力
「彫れる」だけでは職業として成立しにくい。
5. 初期費用はどれくらいかかるのか
初期費用は、環境や進路によって差があるが、
一般的には以下が目安とされる。
初期費用の内訳(目安)
- マシン(2〜3台):10万〜30万円
- 電源・フットペダル:5万〜10万円
- 針・インク・消耗品:月数万円
- デザイン用機材(iPad・PCなど):10万〜30万円
- 衛生用品・家具:数万円〜十数万円
▶ 合計:約30万〜100万円以上
スタジオ所属でも、自己負担が発生するケースは多い。
6. 収入が安定するまでの期間
多くの場合、
- 最初の1〜2年:収入はほぼ期待できない
- 3〜5年:固定客がつき始める
- 以降:指名・スタイル確立で差が出る
収入の立ち上がりは遅い職業である点は理解が必要。
7. 向いている人・向いていない人
向いているとされる人
- 絵を描く習慣がある
- 細かい作業が苦にならない
- 長期的に技術を積み上げられる
- 自己管理ができる(自営業)
注意が必要な人
- 短期間で収入を得たい
- 流行だけで考えている
- 衛生・安全管理を軽視する
まとめ
タトゥーアーティストになるには、
- 日本に明確な国家資格はない
- 法律・衛生への理解が必須
- 初期費用は数十万〜百万円規模
- 長期間の修行・積み上げが前提
自由度の高い職業である一方、責任も大きい専門職と言える。
制度や文化の違いを理解したうえで、
「表現」と「安全」を両立できるかが重要な分野である。


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