馬主は儲かるのか?データで見る収支の現実

「馬主は儲かるのか?」

この問いに対して、感覚ではなく数字と仕組みから整理してみる。

結論から言えば、

**黒字になる馬主もいるが、全体で見ると“儲かる人は少数派”**というのが現実に近い。

馬主の収入の内訳

まず、馬主の収入源は主に次の4つに分かれる。

  • レース賞金(本賞金+付加賞)
  • 特別手当・出走手当
  • 引退後の価値(種牡馬・繁殖牝馬・セリでの売却など)
  • 場合によってはタイアップやイメージ価値

JRAは公式サイトで、預託料(1頭あたり月約70万円が目安)と賞金例を示しており、ある程度の賞金を獲得しないと維持費だけで相当な金額になることが分かる。

具体的な支出イメージ

中央競馬で1頭現役を持つ場合のざっくりした年間コストイメージは以下の通り。

  • 預託料:月70万円 × 12か月 = 約840万円
  • 諸経費(保険・輸送・登録・装蹄など):数十〜百万円規模
    → 1頭あたり年間900〜1,000万円前後になるケースも珍しくない。

もちろん、実際の金額は厩舎や条件によって変動するが、

「年間数百万円単位の固定費がかかる」ことはほぼ共通している。

黒字の馬主はどれくらいいるのか

過去の調査では、馬主の収支について以下のような数字がある。

  • JRA関連資料をもとにした紹介では、年間収支が黒字の馬主は2割前後という推計が語られている。 
  • 古い調査ではあるが、黒字約2割・赤字約7割という構図が示されており、「多くの馬主は採算度外視」という状況は長く続いていると考えられる。 

一口馬主についても同様で、

「1頭単位で利益が出るケースは約12.8%」という試算も紹介されている。

この数字だけを見ても、

「儲かる馬」や「黒字の馬主」は全体の一部に限られると言える。

「黒字馬主」になるために必要な条件

黒字になる馬主は、たいてい次のような要素を複数持っている。

  • 複数頭(10頭以上など)を所有し、リスクを分散している
  • 生産・育成・厩舎選びに関する情報・ネットワークを持っている
  • セリ・下取り・種牡馬・繁殖牝馬としての価値を含めたトータルの回収設計をしている
  • 資金力があり、短期の収支悪化に耐えられる

一方、「1〜2頭だけ所有し、大きな賞金を狙う」というスタイルは、

当たれば大きいが、確率的にはかなり厳しい。

馬主を「投資」と考えるのは正しいか?

投資という観点で見ると、

  • 初期コストが高い
  • ランニングコストも高い
  • 回収のばらつきが大きい
  • データや情報はあっても、最終的には不確実性が大きい

という特徴がある。

そのため、多くの専門家や馬主経験者は、

「馬主は投資というより、高額な趣味・社会的ステータス・産業への参加」と捉えるほうが現実的だと指摘している。

まとめ:馬主は儲かるのか?

  • 黒字の馬主:全体の2割前後とされる
  • 大半は赤字か、良くてトントン
  • 馬主として「儲け」を第一の目的にするのは、数字上かなり厳しい

結論として、

「儲かる馬主」は存在するが、“馬主=儲かる”とはとても言えない。

馬主という立場は、

  • 競走馬産業を支える
  • 生産・調教・レースを含めた“競馬の全体”に関わる
    という意味で捉えたほうが、実態に近いだろう。

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