:タトゥーアーティストという職業をデータで見る ―― 収入・市場規模・将来性
タトゥーアーティストは感覚的には「フリーの職人・アーティスト」というイメージが強いが、
世界の市場データを見ると、はっきりとした産業になりつつある。
ここでは、タトゥー業界の市場規模と収入データをもとに、タトゥーアーティストという職業の現実を整理する。
世界のタトゥー市場規模
複数の調査会社のレポートによれば、
世界のタトゥー市場は以下のように推移している。
- 2022〜2023年時点で、**世界市場は約19〜20億ドル(約2,000億円規模)**と推計されている。
- 2030年〜2032年にかけて、約40〜48億ドル規模まで成長すると予測されている。
- 年平均成長率は約9〜10%前後という見立てが多く、**世界的には“成長産業”**と位置づけられている。
地域別に見ると、
ヨーロッパ・北米が大きなシェアを持ち、アジア太平洋地域も成長が続いている。
日本のタトゥー市場のデータ
アジア太平洋地域の調査では、
- 日本のタトゥー市場規模は、2024年時点で約6,800万ドル(約70億円)規模と推計されている。
- 年平均成長率は約11%と見込まれており、
社会的イメージは厳しいものの、市場としては拡大傾向にあるとされる。
また、タトゥー関連機材(プロ用マシンやインク)の市場も、
2022年に約1.5億ドル規模から2030年には約2.5億ドル規模へ拡大するという予測もあり、産業としては着実に広がっている。
タトゥーアーティストの収入データ(海外)
国や地域によって差は大きいが、
アメリカを例にすると、以下のようなデータがある。
- アメリカのタトゥーアーティストの平均年収は、**約3.9万〜6.1万ドル(約600万〜900万円弱)**というレンジで示されている。
- 経験1〜2年の初心者は2.5万〜4万ドル、中堅で5万〜8万ドル、人気アーティストは10万ドル超も珍しくないという試算もある。
もちろん、これは
- スタジオの取り分
- 税金
- 機材費・インク代
などを差し引く前の数字や、概算ベースの数字である点には注意が必要だ。
日本における収入の目安
日本は公式統計が少ないが、
民間の給与情報サービスなどでは、東京のタトゥーアーティストについて、
- 平均年収:約320万〜430万円程度
- 東京は日本平均より3〜4割高い水準、というデータもある。
ただしこれは「タトゥーアーティスト」という職務分類に基づく推計値であり、
実際にはフリーランス・スタジオ所属・副業など、働き方による差が非常に大きい。
タトゥーアーティストの収入が大きくばらつく理由
タトゥーアーティストの収入は、次のような要素に強く影響される。
- 施術料金(地域・ブランド・スタイルによる差)
- スタジオへの上納・席料の割合
- 予約の埋まり具合(リピーターの多さ)
- SNSやメディア露出による**“指名数”**
- 国や地域ごとの物価・需要
そのため、
「平均値」だけでは職業のリアルは見えにくい。
実際には、
- 初心者:生活ギリギリの収入
- 中堅:一般的なサラリーマン並〜やや上
- トップ:年収1,000万円超クラスも一部存在
という非常に分散の大きい職業になっている。
まとめ:タトゥーアーティストは“成長産業の中の個人ビジネス”
データから言えるのは、
- 世界市場は拡大中(年9〜10%前後の成長予測)
- 日本市場も小さいながら拡大傾向
- 収入は平均値よりも「個人差」が極端に大きい
- 職業としては、アーティストであり、同時に自営業者でもある
ということだ。
タトゥーアーティストという職業は、
市場としては伸びているが、“誰でも儲かる”仕事ではない。
- 技術
- 表現力
- ビジネスとしての継続性
この3つを同時に成立させられるかどうかが、
数字に反映される世界だと言える。


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